船箪笥

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     船箪笥は、江戸時代から明治時代にかけて北前船の船頭が貴重品を入れるために使った小型の箪笥です。鎧のように全体を守る鉄金具に特徴があり、大切なものを容易に取り出せない数々のからくりを持っています。荒波にもまれてもびくともしない堅牢な造り、100年たっても失われることのない漆の輝き、鉄を赤め、鍛え、削って仕上げられる飾り金具の数々。そのデザインは寺院建築の影響を受けながらも独自の発展を遂げ、江戸時代末期から明治時代にかけて頂点に達しました。
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船箪笥
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     北前船は日本海を往来した十数人乗りの木造船で、上方(近畿)の物資を北へ、蝦夷地(北海道)の産物を南へと運んで莫大な利益を生み出しました。その船頭は、全長30メートルにも満たない船で荒海に乗り出す命知らずの船乗りであると同時に商社の経営者でもあったのです。
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船箪笥
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     北前船が港に着くと、待ちかねていた船問屋は船頭を座敷に招き入れてもてなし商談をまとめました。その時、船箪笥はいつも船頭とともに陸にあがり座敷の床の間に置かれたといいます。船箪笥は金庫として主に寄り添っただけでなく、その豪華さは持ち主の力を示し、取引相手の信用を勝ちとる役割も果たしました。そのため、船頭たちは小木(佐渡)、三国(福井県)、酒田(山形県)などの優れた職人に、競って豪華な船箪笥を作らせました。

     当時船箪笥の中に収められていたものは、金銭、往来手形、証文、帳簿類、硯箱、印鑑、算盤、秤などでした。少々の時化でも動じないよう、商家で使われる箪笥にくらべて背は低く小型に作られ、全面を金具で覆うことで重量を増すとともに、容易には壊れない頑丈さと防犯性を有するようになったのです。船が難破しても船箪笥は海上を漂い、運がよければやがて手元へと帰って来る可能性がありました。船箪笥に仕掛けられた数々のからくりは、本来の持ち主のもとに戻るまでの間、大切な財産を隠し、守る役割を果たしました。

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船箪笥
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     こうして独自の発展を遂げた船箪笥ですが、洋式の大型船や鉄道の発達によって北前船が衰退するのに合わせて、明治後期には姿を消してしまいました。
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